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東京高等裁判所 昭和51年(ラ)1066号 決定

抗告人 八須賀小太郎

抗告人 八須賀博

右代理人弁護士 宇留嶋正利

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

抗告人ら代理人は、「原決定を取り消す。本件競落はこれを許さない。」との裁判を求め、その理由として、抗告人らは本件競売の対象である不動産(以下「本件不動産」という。)の所有者(共有。担保提供者)で利害関係人であるが、競売条件の変更については競売法三二条、民訴法六七二条により利害関係人の合意を要するところ、東京地方裁判所は本件競売をするにあたり、抗告人らを含む利害関係人の合意に基づかないで、入札申出人の立てるべき保証額(以下「入札保証額」という。)を入札申出額の一〇分の五とする旨の特別売却条件を定めて競売を実施した違法があるので、本件競落許可決定の取消を求める。という。

記録によると、東京地方裁判所は、入札保証額につき特に定めをしないで競売手続を進行し、昭和五〇年五月二六日荒木従縄に対し本件不動産の競落を許可する決定をし、右決定につき抗告人らから即時抗告、特別抗告をして争ったがいずれも棄却されて右決定が確定したところ、右競落人が代金支払期日にその代金を支払わないため、再競売となったこと、同裁判所は右再競売にあたり職権で昭和五一年一月二二日過去の事件進行の状況に鑑み迅速な競売手続の進行を計る必要があるとして、特別売却条件として入札保証額を入札申出額の一〇分の五と定め、その旨を公告し、昭和五一年一二月九日の入札期日の最高価申出人有限会社内田建設について入札価額金一、八二六万円の一〇分の五相当の金九三一万円の保証金を提供させて昭和五一年一二月一三日同会社に本件不動産の競落を許可する旨決定したことが認められる。右事実によると、右入札保証額に関する特別売却条件は、東京地方裁判所が本件再競売に際し、手続の迅速な進行を図る必要上、従前の競売法三二条民訴法六六四条による入札申出額の一〇分の一を、一〇分の五に変更したものであって、このような特別売却条件の決定は、競売法三二条、民訴法六六二条の二により、裁判所が職権で裁量的にすることができ、利害関係人の合意に基づくことを要しないものであり、右認定の経緯からみると、東京地方裁判所のした右特別売却条件の裁量も相当であって、適法なものということができる。抗告人らは右認定のような場合にも利害関係人の合意を要するというが、独自の見解で採用し難い。その他本件記録に徴しても本件競落許可決定に違法があるとは認められないから、本件抗告は失当として棄却を免れず、抗告費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 中村治朗 裁判官 蕪山厳 髙木積夫)

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